峰守備忘目録《ミネモリビボウモクロク》

小説家・峰守ひろかずが、自著リストや短編小説を公開しているブログです。

学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録

 学芸員。それは博物館や美術館で資料収集・調査研究・解説などに従事する専門職員のことである。
 美術館の学芸員を志望する学生・宇河琴美(うがわことみ)は、大学三年の夏休み、色々あって北鎌倉の小さな博物館「北鎌倉アンティーミュージアム」で博物館実習を受けることになった。
 資格取得のためにやる気を燃やす琴美だったが、その館の学芸員、人呼んで「北鎌倉博物館界のプリンス」こと西紋寺唱真(さいもんじしょうま)は、外面の良さとは裏腹に、呪術の実証と怪しい資料の収集に取り憑かれた変人であった。「まず私を呪ってみなさい」と藁人形を渡してくる唱真に琴美は困惑する。
 丑の刻参りが定着した理由、家族を呪って逝った老婆が残した人形の秘密、鬼の髑髏の祟りの真相、そして現代になお生きる本物の呪術者……。唱真とともに様々な事例に相対する中で、琴美は呪術の奥深さを、そして博物館と学芸員の果たす役割を知っていくことになるのであった。
 眉目秀麗で博聞強記で慇懃無礼、夢は自分の体で呪いを受けること! という美形で優秀で奇矯な学芸員が、不運な実習生とともに北鎌倉の博物館で「呪い」と「まじない」の真実に挑む伝奇ミステリー連作。表紙イラストはカズアキ様です。 2021年3月25日現在で2巻まで発売中です。

  1巻の博物館実習終了からしばらく後。なんだかんだで気が合ったのか、琴美は色々あった実習の後もアンティーミュージアムでバイトを続けており、日々資料の整理をしたり唱真に呪いの話を延々聞かされたりしながら、それなりに充実した日々を過ごしていた。
 そんなある日、二人は地元の住職から「呪いの絵馬に名前を描かれた男が祟りに見舞われた」という噂を聞く。唱真は早速確かめに行く……と思いきや、事態は予期せぬ展開を見せ始める。意外な真相の果てに、唱真はかつて自ら発案し、自ら封印したはずの「呪術」が流出している可能性に気付く。さらには、呪いの方法を売り歩く謎の怪人の存在が浮上して……。
 蠱毒(こどく)から心霊スポットから幽体離脱まで、不気味な物事の真相を解き明かし、呪術を斡旋する怪人を追え! 美麗変人学芸員と不運な女子学生が呪いの謎に挑む北鎌倉伝奇ミステリー第2弾です。